【LMADIS】アメリカ海兵隊がイランで無人機を撃墜。妨害電波で撃墜か

無人機撃墜の概要

 2019年7月18日、アメリカ海軍の艦船がホルムズ海峡でイランの無人偵察機を撃墜したらしい。とのヤフーニュースを見たので、早速調べてみると、どうやらミサイルや機関砲などではなく、電子的な手段による妨害措置が取られたそうな。

 イラン側は、無人機を1機も失っていないと声明を発表。

 いったいどの国の無人機を撃ち落としたのかは不明ながら、アメリカ国防総省の発表では、強襲揚陸艦USSボクサーの900m付近を飛行していたので、警告を与えた上で「防衛的行動」取ったと発表しています。

 ニューヨークタイムズのニュース記事では、shot downになっています。BBCのニュース記事では、destroyedに。

 共通しているのは、

  • トランプ大統領が発表していること
  • 艦船から1000ヤード(約900m)を飛行していたドローンを撃墜したこと、
  • イランは否定していること。

 海外の記事では、撃墜にはいわゆる通常の火器ではなく、電波妨害の方法がとられたらしいこと。ビジネスインサイダーの記事では、今回のドローン撃墜で用いられたと紹介、さらにアメリカ海兵隊の新型無人機撃墜システムについて紹介しています。

参考: https://www.businessinsider.com/weapon-that-destroyed-iranian-drone-lmadis-marine-corps-2019-7

 この記事では、アメリカ海軍の艦船上に搭載されているLMADISの写真が掲載されています。

いずれにしても、アメリカ海軍の強襲揚陸艦に近づいた無人偵察機を撃墜したのは間違いないようです。

LMADISとは米海兵隊の電波妨害車

 ビジネスインサイダーの記事で出てきた、LMADISなるものについて調べてみました。

 LMADISとは、Lightweight Marine Air Defense Integrated System 。軽量海陸統合防衛システムとでも訳しておいたらいいのか、小型車両にも搭載可能な無人機警戒妨害装置。エルマディスとでも読むのかな。

 検索してみると、AVT社という企業で紹介されていました。AVT社(Ascent Vision Technologies)とは、監視カメラや監視機器の開発販売をしているアメリカ企業。

 LMADISを構成するのは、

  • CM202監視カメラ
  • RPS-42 Sバンド警戒レーダー
  • 可搬式電波妨害システム
  • タブレット機器
  • MRAR全地形対応車

となっています。

 軽量小型で可搬式のレーダーと電波妨害によるドローンなどの無人機を警戒撃墜するためのシステムとまとめてしまうのが一番いいような気がします。

 こうした機器を小型で早期に展開可能な車両に搭載してしまうのは、海兵隊ならでは。全地形対応のATVは、海兵隊ですでに実践投入されていますが、この便利な車両に統合して既に実戦投入されているのは素晴らしいスピードです。

 今回のイランの無人機撃墜に実際に使われたのであれば、1000ヤード(914m)程度のエリア内は監視および妨害による防衛措置がとれるということ。

 今後は、テロ対策などでも積極的に投入されていくのかなと単純に思いますが、小型のドローンなどでは無線LANなどの2.4GHz帯や5.2GHz帯(日本国内では規制)が使われていることもあるので、こうした周波数帯も当然カバーしていると思うのでそれらの機器への影響も多少気になるところです。

 ちなみに日本国内で市販されているドローンは、どれぐらいの範囲内で飛べるのか調べてみたところ、5000mぐらいは電波が届くようです。参考 DJI MAVIC2 スペックhttps://www.dji.com/jp/mavic-2/info#specs

 日本国内の事件?ですが、2019年5月6日午後7時ごろ皇居近くの北の丸公園付近でドローンのような物体が飛行しているのを警備の機動隊員が目撃されている。白いドローンということはわかったものの、結局犯人は捕まっていません。

 ま、最高時速72キロで飛べるドローンを都内の夜間に捉えるのは難しいか。首相官邸の屋上にドローンが落ちた事件もあったような。

 いずれにしても、ドローン対策をしておかないと今後は警備の穴となるので、警察庁も今後電子的なドローン妨害機器を導入していくでしょう。

ベース車両はポラリス社MRZR-D

 アメリカ海兵隊のLMADISで活用されている車両は、MRZR-Dという全地形対応車両。

 アメリカ海兵隊で公式に動画で紹介されています。

 大柄のアメリカ人を4人+荷物を積んで、結構なスピードで走れるのでパワーは十分。この車両の大きさは、MV-22オスプレイに搭載可能なことが条件に開発されているらしく、艦船だけでなくオスプレイによる早期の現場投入も可能になるとのこと。

↓こちらはMV-22に積み込まれるMRZR車両の様子。

 ATV社の記事 https://ascentvision.com/what-is-next-for-the-lmadis/ では、MRZR-Dの屋根にレーダーと監視カメラを搭載した写真が掲載されています。上述のビジネスインサイダーの記事では、艦船上に搭載されたこのMRZR-Dの写真も掲載されています。

 もっとも、強襲揚陸艦にはそもそも強力なレーダーが備わっているわけで艦船に搭載している海兵隊車両のLMADISでは近距離エリアでのドローン監視撃墜が任務になっていたのかもしれません。

 ただし、無人偵察機を運用する側からみると、LMADISのような妨害装置は大変やっかい。無人機とはいえそれなりのコストがかかるわけで、機密機器を搭載しているドローンなり無人機を電波で簡単に落とされては困ります。

 味方の基地や施設を防護するという意味では、非常に役立ちそうです。LMADIS装備のMRZR-Dは1台いくらぐらいなのか、興味がありますが、たぶん3000万円ぐらいかなと予想。車両が400万程度で後は監視電波妨害システムなど。

 ちなみに、このMRZR-Dの車両は日本国内でも販売されているそうです。後述。

日本のドローン対策妨害装置

 国内でもドローン対策に妨害システムが販売されているようです。もちろん一般販売はないと思いますが、警察や自衛隊にはもしかしたらすでに導入されているかもしれません。

 

国内では、日本通信エレクトロニックさんが販売している装置で、レーダー部分と光学カメラ妨害装置は別々になっています。イスラエルの国防機器メーカーの製品で、ドローンが使用している周波数帯に妨害電波を出すこと ができるようです。

参考リンク https://www.jacom.com/company/t_23a.html

 電波法やらなにやらの許可が必要な機器だと思いますので、こうした機器の導入には自衛隊なり警察なりの公的機関が対象になってくると思いますので、こうした機器があるというだけでも知っておくといいかもしれません。

 値段は一式でいくらぐらいなんでしょうね。

ポラリスのATVは日本でも乗れる

 上で紹介したMRZR-Dですが、ポラリス・インダストリー社というアメリカの車両メーカーが製作しています。もともと、スノーモービルやオフロード車などの全地形対応車両を製作しているらしく、1954年創業のメーカーさんです。

 ポラリス・インダストリー社の公式サイトを見てみると、結構ラインナップがあって、オフロードで走らせてみたい方には興味がそそられる内容となっています。

 そんなラインナップの中でも、アメリカ海兵隊が実践投入しているMRZR-Dの4人乗りモデルMRZR-4が日本国内でも乗れると紹介されています。

 車種は大型特殊車両となるそうですが、ナンバーを取得して一般道を走行可能とのこと。日本のナンバーがついてしまうと、正直微妙ですが、それでも注目度は抜群です。値段は、700万円程度ではないかということです。(別記事参照)

 ↓こちらでは、国内のサバゲーイベントでMRZRに試乗されている様子が紹介されています。

■参考リンク
https://www.whitehouse-orv.jp/
https://news.militaryblog.jp/e648638.html